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悪い人ではないけれど疲れる…『スライサー』タイプの特徴は?

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スピリチュアル界隈ではもはや有名な『ギバー』『テイカー』『マッチャー』論ですが、最近これに『スライサー』タイプが加わったことはご存じでしょうか?

正確にはギバーテイカー論がアレンジされた新説なのですが、これが多くの人から「あるある」と共感を呼んでいるのです。

今回の記事ではそんなスライサーについてご紹介してまいります。

スライサーはこんな人

スライサーとはどんな人なのでしょうか?

スライサーをひとことで言うと、周囲に居る人を「神経がじわじわとすり減る」ような気持ちにする人なんだとか。

「悪い人ではないんだけど…」「嫌いではないけど…」と前置きが入ってしまう人と言えばわかりやすいかもしれないですね。

テイカーとは違うの?

似たようなタイプにギバーテイカー論のテイカーが存在しますが、テイカーとスライサーの違いは「他人より徳をしたい」か「自分が損をしたくない」かという点にあります。

テイカーの価値基準は分かりやすく「他人よりも自分が最も優位である」ことで、そのためにしばしば他人のものを暗に奪おうとする言動が見られます。

スライサーは他人から奪うまでのあからさまな言動こそ見せないものの、他人どうこうではなく「とにかく自分が損をする状況を避けたい」という強い価値基準があるため、周りから「悪い人ではないけど一緒に居るとモヤモヤする」「なんとなく疲れる」といった評価を受けることもしばしばです。

スライサーの言動について、わかりやすく身近なたとえで見て行きましょう。

自分から率先して行動しない

スライサーは複数人で居る時にそれとなく「他の人に任せる」言動が多いことがあります。

例えば旅行の話をしているときに「天気はどうかな?」「観光名所に行きたいね」など提案するけど調べなかったり

人が困っているような時に「助けたほうが良いかな」「どうしよう」など自分が率先して動かず他の人に決定権をゆだねるなどがその例となります。

他に率先してやってくれそうな人が居ればお願いしたいし、自分が決めたことで悪い結果が起きた場合を想定してあらゆる責任を負うことも避けたいのがスライサーの基本理念です。

プライベートで『ちょっとした遅刻』が多い

仕事ではちゃんとしていても、プライベートのお付き合いでは「ちょっとした遅刻」が多いのもスライサータイプの特徴です。

決して30分~1時間待たせるような大きな遅刻ではなく5分~10分程度の「ちょっとした遅刻」ではあるのですが、例えば「待たされた側は忙しいところわざわざ時間を作っている」「この後にも用事がある」といった場合にはちょっとモヤモヤしてしまいます。

当事者であるスライサーには全く悪気は無いため、待つ側が「ちょっとしたことで目くじらを立てる自分が悪いのかな」「イライラしすぎかも」と自己嫌悪してしまうこともあるでしょう。

「自分が言いにくいこと」を人に言わせる

他人に何か思うことがあっても自分からは言わず、第三者から言わせるというのもスライサーの特徴です。

例えば集団作業中に「Aさんの無自覚の小さなミスが原因で全体の流れが止まっている」ような場合、スライサーはAさん本人にそのことを言わず、無関係のBさんに対してAさんのミスについて言及します。

「本人に直接言ってあげればいいのに」と思うようなことでも、スライサーはわざわざ第三者を介して自分の意図が本人に伝わるのを待つのです。

こうした行動は「自分がそれを本人に指摘したことで損を被りたくない(嫌われたくない)」といった想いの強さゆえなのですが、伝言鳩にされる側は少々面倒くさく感じてしまうこともあるでしょう。

スライサーを提唱したのは日本人女性

そんなスライサーについて提唱をしたのは、ふたりの男の子のお母さんでありラジオ配信者として13万人のフォロワーを持つ日本人女性『尾石晴』さんです。

作家やヨガインストラクターとしても精力的に活動する尾石さんは、外資系メーカーに16年勤務・転職5回・管理職経験もあるという人生経験の豊富さと、大学で心理学を専攻していた知識から「多くの人が感じていてもうまく言葉にできないモヤモヤ」をずばっと言語化するスタイルで多くの人から共感を得ています。

スライサーについて尾石さんは「テイカーまではいかなくとも、サラミを切るようにうすくうすく人から『もの・こと』を奪っていて、本人も無自覚にいつのまにか周りから人がいなくなっちゃう」と説明しており、ネット上では「いるいる」「母親がスライサーだ」など共感の声が多くあがっています。

↓尾石さんがスライサーについてラジオで説明した回のリンクはこちらになります↓

人類は『損』が嫌い

共感の嵐を呼んだ尾石さんの新説ですが、実はこうしたスライサーの「損をしたくない」価値基準は全人類に共通して備わっているものです。

ここで少し『損』が人類へ無意識に与えるインパクトについて解説をいたします。

ノーベル賞をとった『プロスペクト理論』

まずスライサーに限らず人が『損』を嫌がる行動については40年以上前にすでに『プロスペクト理論』として立証がされています。この理論は「行動経済学の基礎を築いた」として2002年にはノーベル経済学賞を受賞しました。

プロスペクト理論を簡単に説明するため、ここで過去に実際に行われたテストをしてみましょう。以下の2択を迫られた場合、あなたはどちらを選びますか?

  • A:無条件で今すぐ200万円もらえる
  • B:じゃんけんで勝てば400万円もらえるが、負けたら何ももらえない

いかがでしょうか?プロスペクト理論によれば、この場合はほとんどの人はAを選びます。

しかしここで
「あなたには今400万円の借金があります。Aを選べば200万円の借金が残りますが、Bを選べば50%の確率ですべての借金が無くなります」といった条件を追加するとどうでしょうか?

実験の結果は多くの人がBの選択肢を選んだそうです。

『Aを選択しても結果として自分は損を被ったままである』『Bを選択すると損を完全に回避できる可能性がある』という2点を秤にかけた結果、多くの人から後者が選ばれたのです。

こうした実験の結果は「人は原則的に『損な状況』を避けようとする心理があること」「もしも『損な状況』を目前にすれば、確実な利益を捨て多少のリスクを負ってでも挽回しようとする傾向があること」を明らかにしています。

ギャンブル依存症の人が「負けたままでは帰れなくなってしまう」「挽回しようと次々に資金をつぎこんでしまう」のも、背景にはプロスペクト理論が大きく関わっているとされていますよ。

そもそも『損』は心理的ダメージが大きすぎる

また、そもそも『損』が人の心理に与えるインパクトの強さは『徳』がもたらすインパクトの約2.25倍と言われています。

「思わぬラッキーで1万円を手に入れた喜び」以上に「うっかり1万円を落としてしまった悲しみ」のほうが倍以上に強く心に残るんですね。

ベルギーの大学で行われた実験によると、27種の感情の中でも最も持続時間が長く尾を引くのは『悲しみ』であり、『喜び』が発生から35時間程度しか持続しないのに比べて『悲しみ』は発生からおよそ120時間持続することが分かっています。

引用元:悲しみの感情は他の感情に比べ240倍も長く続くことが判明(ベルギー研究)(令和6年7月取得)

こうした数々の実験で明かされているように『損』が人に与える心理的ダメージは非常に大きく、『損』を経験するたびに人は「もうこんな思いはしたくない」「損したぶん取り返したい」と損を避けるための選択をとったり、損をチャラにする選択をとるよう学習していくのです。

その結果として損をひどく嫌がるスライサーのような人も誕生するのですね。

誰でもスライサーになる可能性はある

ここまで全人類は損が嫌いということを解説してきましたが、これは翻って見れば「誰もがスライサーになる要素を持っている」ということでもあります。

「自分は絶対そうはならない」と思っていても、例えば次に挙げるようなふとした瞬間に自分が誰かにとってのスライサーになってしまう可能性はありますのでご参考ください。

相手が親しい人であるほど注意を

小難しい話を抜きに乱暴に言ってしまえば、スライサーは「甘えんぼ」が顔を出した状態です。

普段はしっかり自主自立している人でも、例えば家族や恋人、親友といった気心の知れた人相手に対しては「自分でもできるけどやってほしい」「マイペースにしていても大目に見てほしい」と甘えんぼマインドが出ることもあるでしょうし、実際になにか「やってもらう」「大目に見てもらう」機会も多いでしょう。

はっきり言ってそれ自体は問題ありません。気を付けなければいけないのは、それが常態化して「なんとも思わなくなってしまう」「無自覚になってしまう」こと。「やってもらうことが当たり前」になってしまっているとそれはすでにスライサーに片足を突っ込んでいます。

相手があなたにとって親しい人であるほど、些細な事でも「やってもらう」ことに感謝やお返しの気持ちをもって接するようしましょう。

損を怖がりすぎてしまう

「損をする」ことを怖がりすぎるのもよくありません。「失敗は成功のもと」はまさにその通りで、人が成長したり前進する過程には必ず失敗が伴います。

波風の断たない平穏な状況を好むと言えば聞こえは良いものの、それでは大きな進歩も良い変化も引き込めませんし重要な場面は他人まかせです。

損を怖がる気持ちは人として自然なことではありますが、損を怖がるあまり自分がチャレンジすることを辞めてしまえば、その時点から成長も前進もできなくなります。

損をやみくもに怖がったり自暴自棄的にチャレンジするのではなく、自分にとってハードルの高い物事を前にした場合は「結果として起こり得る損」と「リカバーの方法」をまず想定してから取り組むようしてください。

まとめ

テイカーと異なりスライサーはあからさまに他人から奪うことはしないものの、言語化しにくい『モヤモヤ』とストレスを周囲に与えてしまいます。

しかし、損を嫌って避ける心理自体は人間なら誰しも持っているものであり、すべての人が誰かにとってのスライサーになってしまう可能性は決してゼロでは無いのです。

自分自身がスライサーにならないためにも「他人から物なり時間なり配慮を『もらう』こと」があっても決して当たり前と思わないこと、また損を怖がりすぎず主体的にチャレンジをする姿勢を忘れないようにしましょう。

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